アンテナ位相特性データとは

同一機種のアンテナを利用したGNSS測量においては、常にアンテナ高を同じ部位にたいし て測定している限り100Km以下の基線では以下に述べるような位相特性データを利用しなく ても精度に影響はありません。これに反し、異なる機種のアンテナを混合した場合は1mの 短い基線においても高さに数cmの誤差を生じる場合があります。

アンテナ位相特性データ」とは 、アンテナの電気的な中心を特定するための定数のセット です。この定数は「オフセット」 と「PCV(Phase Center Variation)」 と呼ばれるテーブルで構成されます。そして、それらはL1とL2それぞれに与えられます。

1.オフセット

オフセットは南北方向、東西方向、上下方向の3個の成分で表されます。南北方向、東西 方向のオフセットは、アンテナを固定するためのネジ穴の中心からの電気的中心のズレ量 であり、上下方向のオフセットは、物理的に分離不可能なアンテナの最下部から電気的中 心までの長さです。物理的に分離不可能なアンテナの最下部とは、アンテナに付属の求心 台にセットするための着脱アタッチメントを外した状態での最下部を意味します。このよ うなオフセットの基準位置を「ARP (Antenna Reference Point)」と呼びます。

2.PCV(Phase Center Variation)

GNSS衛星の電波はアンテナ上の1点に集中しません。特に衛星の高度角に依存してズレ量 が異なります。そこで高度角5度毎にズレ量の表を作り内挿して補正することにより、1点 で観測した状態にします。この補正を「 PCV補正」と呼びます。

PCV図

3.アンテナ位相特性データの決定方法

位相特性データは電波暗室と呼ばれる特殊な施設で決定される 「絶対的位相特性データ」 と、特定な基準アンテナにたいする相対的な値として決定される 「相対的位相特性データ」 の2種類があります。本サービスで提供する位相特性データは後者のものです。 この場合の特定な基準アンテナとは米国の国土地理院とでも言うべき「 NGS(National Geodetic Survey)」のアンテナ検定施設にあるアンテナです。各機関やメーカ ーで決定する場合は、NGSで検定された精密なアンテナと同一種類のアンテナを基準アン テナとします。

位相特性データは、座標が既知の数mの基線において基準アンテナと被検定アンテナによ る24時間のスタティック観測のデータを利用して決定されます。

オフセットの値は、一端の座標のみ固定し下限高度角15度で基線解析を行った結果と基 線値との差として決定されます。

ただし、これはあくまで標準的なもので、このようにしなければならないという国際的な 規定はありません。このような事情から基線解析においては下記の注意事項に述べる ような配慮が必要になります。

次に、上記のように決定されたオフセットと基線の両端の座標を固定し下限高度角10度 で基線解析を行った結果得られる残差を高度角の関数として近似します。PCVはこの関数 を使って計算した高度角5度毎の値を表にしたものです。

4.アンテナ位相特性データ使用上の注意事項

寸法図